2022年7月に文部科学省「データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクト」に採択された5拠点が共同で、「富岳」によってのみ達成可能な超大規模計算、超長時間計算、超大量計算を実現する材料シミュレーション技術の開発をベースに、新たなデータ駆動型研究手法を創出する。
物質・材料研究機構
磁性・スピントロニクス材料
研究センター
只野央将
カーボンニュートラルの実現へ向け、CO2を排出しない電力システムや省電力デバイス、車両の電動化など多くが求められている中、これらに資する永久磁石材料、軟磁性材料、磁気記録媒体など、革新的機能を持つ磁性材料の効率的な開拓が求められている。本サブ課題B 磁性材料(NIMS拠点)では、「富岳」を活用したハイスループット計算によって、磁性材料データの拡充・拡大を行う。特に、材料が実際に利用される室温や高温環境における結晶構造や熱力学安定性、輸送特性データを拡充するために、密度汎関数理論(DFT)に基づく第一原理フォノン計算を実施する。
フォノン関連物性の計算は基底状態の第一原理計算と比較して高コストであるが、NIMSで開発している高効率・高機能フォノン計算エンジン「ALAMODE」と富岳を連携することで、数千以上の組成・構造に対する世界有数の磁性材料フォノンデータベースを効率的に構築することが可能になる。構築したデータベースとデータ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクト磁性材料開発拠点(DXMag)の成果を連動して磁性材料マップの拡充(下図)を行い、データ科学手法を用いて解析することで、磁性材料を特徴付ける少数の変数(記述子)の抽出や次に調べるべき物質領域や探索の方向性を特定し、高機能磁性材料の探索を加速する。