2022年7月に文部科学省「データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクト」に採択された5拠点が共同で、「富岳」によってのみ達成可能な超大規模計算、超長時間計算、超大量計算を実現する材料シミュレーション技術の開発をベースに、新たなデータ駆動型研究手法を創出する。
京都大学
福井謙一記念研究センター/
工学研究科
佐藤啓文
高分子材料は利便性と安定性、そして優れた物性から、さまざまな自然環境や、生体環境で利用されている。一方で、近年は高分子材料の長期安定性が自然環境や医療に問題を引き起こしており、環境分解性や生体適合性を示すバイオアダプティブ材料が求められているが、その分子設計は既存の科学技術では達成できていない。こうした状況を踏まえて、京都大学拠点では、サーキュラーエコノミーおよび資源循環に対応した、バイオアダプティブ材料の開発に資する理論・計算研究を展開する。具体的には、高タフネス・環境低負荷高分子、高度循環型高分子、QOLバイオマテリアル、および二酸化炭素分離回収材料を含む機能性や自己修復能を付帯するバイオアダプティブ材料などがそのターゲットとなる。
一般にMI駆動で提案される高分子設計を既存の合成手法で達成できるとは限らない。また実際の材料としても、その溶解性や力学物性、熱物性、結晶性などの基本的特性をバイオ高分子の配列のみから推定することは難しい。本サブ課題E バイオ・高分子材料(京大拠点)では分子動力学シミュレーションを基軸に、統計力学理論、高分子理論などを有機的に連携しながら、アミノ酸あるいは全原子レベルの情報と種々の物性値を結びつけることで材料開発の効率化を加速する。